2023年米国リセッション予想に備えての定点観測をしておりますので、ご紹介をします。
投資家が留意すべきことは、株式市場に関する投資指標に欠点がないものは存在しないということです。しかしながら、多くの指標では、現在市場が割高であることを示している場合、投資家はそれに注意を払う必要があります。
今年に入り、米株式市場は持ち直しを見せていますが、昨年の急落分を完全に取り戻したわけではありません。S&P500種指数は、2022年初めにつけた最高値から約14%下がっています。これにより、割高感は和らいだものの、まだ割安とは言えません。

業績データを集積しているファクトセットによると、S&P500種の株価収益率(PER)は、向こう1年の利益予想に対して現在約18.3倍となっています。これは、昨年初めの21.6倍からは下がったものの、過去5年間の平均である16.9倍を上回っています。
また、株価売上高倍率(PSR)も約2.25倍であり、昨年初めの2.85倍からは下がりましたが、新型コロナウイルス流行前の5年間の平均である1.91倍を上回っています。現在の水準から過去の水準まで戻るには、S&P500種は15%値下がる必要があります。
投資指標には完璧なものはなく、アナリストの予測に基づくため、不正確になりやすいことがあります。特に現在の経済が厳しい状況に直面している場合、アナリストは楽観的になる傾向があるため、くすぶるリセッション(景気後退)懸念などに関して注意が必要です。現在のアナリストのコンセンサス予測によると、S&P500種指数構成企業の利益は、7-9月期に前年比でプラスに転じ、10-12月期には8.5%増と予想されています。
投資指標に基づくもう一つの問題は、米国会計基準(GAAP)に基づく利益に計上される一時項目の多くを除外するケースが多いことです。しかし、GAAPベースの過去1年の利益を使用しても問題が生じます。GAAPベースの利益は非常に変動が大きいため、景気循環を考慮したPERである「CAPEレシオ」を1990年代にエコノミストのロバート・シラー氏とジョン・キャンベル氏が考案しました。また、過去10年間のインフレ調整後のGAAP利益の平均値とS&P500種の株価を比較することにより、過去の極端な好不調を補正することができます。

現在、CAPEレシオは28.9倍となっており、2021年11月の38.6倍から大幅に下落していますが、シラー氏が収集した142年間のデータによると、ITバブル時期以外にこれほど高いCAPEレシオはありませんでした。
GAAPは、企業が費用を見過ごしたいと考えるような項目を多く計上することで、利点を持っています。しかし、会計規則の変更が利益を長期的に押し下げる可能性があるため、GAAPは完全に安定的な概念ではなく、CAPEレシオに対する批判の一つとなっています。この問題に対処する方法として、商務省が発表する税引き後利益を利用する方法があります。このデータはGAAPに似ていますが、一貫性のある基準に従って計算されています。この指標を用いて、米連邦準備制度理事会(FRB)の株価データと比較することで、株価全体が割高なのかどうかを判断することができます。しかし、算出されたCAPEレシオは、第4四半期に20.5倍であり、50年間の平均である15.7倍を上回っています。つまり、株価が割高ではないとは言い切れません。

この投資指標のネックの一つは、多数の非上場企業が生み出す利益が含まれることだ。米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が好んで使うことで知られる、国内総生産(GDP)と時価総額を比較する投資指標でも、同じ問題が起こる。第4四半期時点で、FRBのデータに基づく時価総額は年率換算GDPの179%だ。これはコロナ禍に絡む急上昇を除けば、かつてない高水準だ。背景には、GDPに占める上場企業の割合が時間とともに高まったことがある。とはいえ、他の指標も株価が割安であることを示していれば、バフェット氏の指標は無視しやすいだろう。

危険運転をすれば、無事に帰宅できないとは限らないように、割高感の強い株式市場が必ず下落する運命にあるというわけではない。それでも事故発生の確率が上がるのは確かだ。
最後に、投資タイミングとしてのクレジット状況を見てみましょう。
私の書籍に詳しく書いておりますが、流動性リスクを取りに行くタイミングとして非常に大切な機会と考えております。


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