保有中の現物株を証券会社に貸し出すことが可能なサービスとして貸株サービスを提供している証券会社があります。貸株サービスでは基本的には配当金を受け取ることはできませんが、貸出中に配当金が支払われた際に配当金相当額として金利に上乗せして支払われるサービスを提供している場合もあります。今回は配当金相当額の概要と確定申告時の注意点を解説します。
貸株サービスの概要
貸株サービスは、保有している現物株を証券会社に貸し出すことが可能となるサービスです。証券会社が顧客から株式を借りることで、機関投資家などに貸し出すための在庫として保有するものです。証券会社は株式を借りる代わりに、賃借料として金利を定期的に支払います。
株式投資では、売却益や配当金、株主優待などが一般的な利益獲得方法ではありますが、保有中の現物株を有効に活用するためにも株式を貸し出すことで金利収入を得ることも可能となります。金利収入は銘柄にもよりますが概ね年率1%、高くても10%の金利を得ることができます。
ただし、現物株を貸出中の場合は、名義人が変わってしまうことになりますので、配当金や株主優待は原則として受け取ることはできず、その場合は一旦返却してもらうなどの措置が必要ですが、配当金の場合は証券会社が独自に通常の金利に対して、配当金相当額を金利に上乗せして支払う場合もあります。
配当金相当額は配当金額から源泉徴収額を差し引いた額が受け取れる
貸株サービスを利用する場合、配当金については名義が変わっているため、原則として受け取ることはできませんが、証券会社では独自に、通常の金利に上乗せして配当金相当額を上乗せして支払う場合もあります。
配当金相当額とは、現物株を直接保有している場合に受け取るであろう配当金の金額から、所得税や住民税など源泉徴収される金額(20.315%)を差し引いた額とのことです。
そのため、配当金相当額を受け取る場合は、本来の配当金額から源泉徴収された金額が、金利に上乗せして受領できます。
一方で、詳しくは後述していますが配当金相当額の所得の扱いは配当所得ではなく雑所得として扱うことになりますので、確定申告時は雑所得として申告が必要になります。
配当金相当額は確定申告時は雑所得として申告が必要
配当金相当額を受け取った場合において、確定申告を行う場合は配当所得ではなく雑所得として申告が必要になることに注意が必要です。
雑所得として扱われますので、他の所得と合算して収める税額が決まる総合課税として扱われることになります。また、雑所得となりますので、配当控除ができないことに加え、損益通算を行うことはできなくなります。
また、配当金相当額は、前述したとおり源泉徴収された金額を差し引いて入金されますので、確定申告で雑所得として申告すると二重で課税されることになりますので、その点も予め留意しておく必要があります。
配当控除や損益通算を行いたい場合は、配当権利日に一旦返却してもらい配当金として受け取る必要があります。楽天証券やマネックス証券、松井証券では配当権利日までに自動で株式を返却可能な「配当取得設定」が可能となっていますので、これらをうまく利用すると良いでしょう。
貸株サービスを提供している証券会社
貸株サービスは、SBI証券の他、楽天証券、マネックス証券、松井証券で提供しています。
SBI証券
SBI証券では、同社の証券口座で保有している現物株を貸し出すことができます。加えて、外国株で米国の現物株を保有していれば、米国株を貸し出すことも可能です。SBI証券では最高金利の上限無しで利用可能です。また、株式優待を得たい場合は、優待権利日になると自動的に株式返却が可能となります。
楽天証券
楽天証券では、貸株サービスとして高金利な銘柄が多いのが特徴で年率1%以上の銘柄が460銘柄以上取り揃えています。また、株主優待の他、配当金受取時に一時的に返却することも可能です。また、金利優先の場合は貸株を自動で継続することで権利日には通常の5倍の金利を受け取ることができます。
マネックス証券
マネックス証券では、ボーナス金利銘柄を多く取り揃えており、年率5%超の銘柄も多くあります。また、株主優待や配当金の受取時に自動的に一時返却することも可能で、金利だけではなく配当や優待も確実に受け取れます。また、マネックス証券では貸出中でも株式の売却が可能です。
松井証券
松井証券の貸株サービスは、最低金利が年率0.2%と他社より高めの金利設定となっているのが特徴です。一方で、対象銘柄がやや絞られていますが、確実に高い金利を得たいと考えている方におすすめです。株主優待や配当金の受取時に自動的に一時返却することも可能な他、株主優待や配当金を両方受け取れる権利獲得優先設定が可能です。