株式投資を始める場合、投資先の企業の財務健全性を知ることが重要です。その指標として活用されるのが「自己資本比率」です。今回は、自己資本比率について詳しく解説します。
自己資本比率は総資産から負債を差し引いた自己資本の割合
企業の財務健全性を把握するには、自己資本(株主資本)の割合がどれくらいあるのかを把握することが重要です。株式会社の場合、自己資本は、純資産であり株主の資本でもありますので、株主資本とも言われます。
企業は、自己資金だけではなく、金融機関からお金を借りて事業を行っています。そのため、総資産に対して負債がどれくらいあるのかを把握した上で、手持ちの資金はどれくらいあるのかを把握できます。
総資産には、現金や有価証券の他、工場や店舗、土地や建物、機械が含まれています。当然、工場や店舗、土地や建物、機械を購入するのに、金融機関からお金を借りている場合もあります。その借入金を負債と呼びます。総資産から負債を差し引いて、残った部分を自己資本と呼びます。
自己資本比率は、総資産から負債を差し引き、残った自己資本の割合が総資産に対してどれくらいあるのかを示したものです。
また、それらを一覧化した書類を賃借対照表と呼び、左側に総資産、右側に負債と自己資本で構成されます。
自己資本比率の計算方法
自己資本比率は、前述したとおり、賃借対照表からその数値を追うことができます。自己資本の額に対して、総資産の額で割り、100を乗算して算出することができます。
自己資本比率=(自己資本÷総資産)×100
例えば、総資産が1,000万円、自己資本が500万円であった場合、自己資本500万円に対して、1,000万円を割り、100を乗算すると、50%となります。そこから自己資本比率は総資産の額に対して、半分の割合であることがわかります。
上場企業は、必ず四半期ごとに決算を発表し、その段階で決算表を公開します。決算表には、賃借対照表も記載されており、そこに記載されている数値を活用して自己資本比率を算出することができます。
自己資本比率の目安は30%~40%程度
自己資本比率の割合が高くなればなるほど、企業が万が一、経営が厳しくなったときに手元資金が豊富なため、事業再生も迅速に行なうことが可能になり、業績回復も期待できます。
一方で、自己資本比率が低い場合は、経営が厳しくなった場合、経営再建のために、更に資金を調達する必要が出てきますが、金融機関からの信用は低くなり、資金調達が難しくなることも考えられます。
自己資本比率は、業種にもよりますが、大まかな目安としては30%~40%程度であるとされています。
日本には製造業や小売業、飲食業といった、固定資産が多く、人件費や設備に多くの費用が発生する業種が多いですが、それらの業種では自己資本比率は低くなる傾向にあり、上場企業において30%程度を保っている企業が多いです。一方で、多くの固定資産が不要となる情報通信業については、自己資本比率は高くなる傾向があり、上場企業において50%以上を保っている企業も多いです。
自己資本比率は高すぎるのも問題
日本企業の内部留保額推移(各種データを元に筆者作成)
自己資本比率は、数値が高ければ高いほど財務健全性は高くなりますが、上場企業の場合、自己資本比率が高すぎるのも問題であります。
もちろん、経営が厳しくなった場合、自己資本で迅速に経営が再建しやすい利点はありますが、自己資本が高い場合、内部留保が多く、株主還元が積極的に行われていない可能性も考えられます。
内部留保が高くなると、株主還元として配当金の支払いが無いもしくは少なく、株主側で受け取る利益が少なくなり、新規投資が行われないことから、将来的に企業が継続的な事業拡大が阻害され、収益向上の機会を逃すことに繋がります。結果として、「自己資本利益率(ROE)」が低下し、長期的に株価が低迷する要因にもなります。
そのため、単純に自己資本比率が高いだけではなく、自己資本の使い道についてもしっかりと調べた上で、自己資本比率の割合を保つことと、将来的な投資、株主還元が両立できる企業に投資することが重要であると言えます。