長期投資を前提に投資先を探す場合、事前に対象企業の経営状況を把握しておくことが重要です。それを知る経営指標の一つとして総資産利益率(ROA)があります。今回は総資産利益率(ROA)の概要を解説するとともに、計算方法とROEとの違いについても解説します。
総資産利益率(ROA)は総資産を利用してどれだけ利益を出しているかを知る指標
総資産利益率(ROA)は、英語でReturn On Assetの略で、企業が持っている総資産を利用してどれだけ利益を出しているかを知る指標です。
企業が稼いで得た最終的な利益である当期純利益を総資産で除して算出するもので、数値が高ければ高いほど、手持ちの資産を活用して効率的に利益を出していることがわかります。
総資産利益率の目安としては、業種にもよりますが、5%以上を算出しているかを目安に投資先を選ぶと良いでしょう。
企業が効率的に利益を出しているかを知る指標として、自己資本利益率(ROE)がありますが、違いについては後述していますが、総資産利益率(ROA)は、他人の資本についても含まれます。
総資産利益率(ROA)の計算方法
総資産利益率(ROA)は、パーセント(%)で表記します。計算方法としては、企業が稼いだ最終的な利益である当期純利益を総資産で除して、100で乗算して算出します。
総資産利益率(ROA)%=当期純利益÷総資産✕100
例えば、Microsoft(MSFT)の場合、2020年3月期の決算時における総資産は285.45億ドル、同じく、2020年3月期の当期純利益は46.27億ドルとなっており、計算すると16%となります。
当期純利益46.27億ドル÷総資産285.45億ドル=総資産利益率(ROA)16%
総資産利益率(ROA)と自己資本利益率(ROE)の違い
賃借対照表の青の部分が総資産、緑の部分が自己資本(筆者作成)
総資産利益率(ROA)と自己資本利益率(ROE)の違いとしては、前者は自己資本に加え借り入れなど他人の資本も入っているのに対し、後者は、他人の資本を差し引いた自己資本のみで算出している点が異なります。
総資産は、自身が保有している資産に加え、借り入れ金といった負債も含まれています。自己資本は負債を差し引いて残った手元の資金となります。
株式会社の場合、自己資本は株主資本となりますので、自己資本利益率(ROE)は株主から預かったお金でどれだけ効率的に稼いでいるかを知ることができます。
株式投資の場合は、総資産利益率(ROA)に比べ、自己資本利益率(ROE)が重視される傾向がありますが、当然ですが自己資本利益率(ROE)が高いから良いと判断するのではなく、総資産利益率(ROA)に加え、株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)といった他の指標も合わせて確認することが重要です。