年間120万円までの投資による利益が非課税となる少額投資非課税制度(NISA)において、現時点でNISAで運用中の株式や投資信託を他の金融機関に移管したいと考える方もいらっしゃるかと思います。今回は、NISAで運用中の株式や投資信託を他の金融機関に移管することができるのか解説します。
NISA口座で運用している投資商品は移管できない
NISA口座で運用している株式や投資信託といった投資商品は、原則として他の金融機関に移管することはできません。
NISAは1人1口座までとなっており、複数の金融機関で複数のNISA口座を保有することはできません。そのため、NISA口座で保有している投資商品は、原則として買付を行った金融機関で保管しておくことになります。
一方で、NISA口座そのものを他の金融機関に変更することは可能です。その場合は、現在利用している金融機関に対して、金融商品取引業者変更届出書に必要事項を記入した上で提出する必要があります。
変更先の金融機関にてNISA口座が開設されれば、これまで使っていたNISA口座は廃止となります。ただし、その場合においても、これまでNISA口座で保管していた投資商品は移管することはできません。仮に非課税期間が終わっていない場合は、NISA口座を他の金融機関に移管したあとでも、これまで利用していた金融機関で非課税で保有することはできます。(非課税期間が終了すると売却もしくは課税口座に移管する必要があります。)
他の金融機関に移管したい場合は課税口座に移管後に手続き可能
NISA口座のまま他の金融機関に移管することはできませんが、NISA口座で管理している投資商品を、一般口座もしくは特定口座に移管できれば、他の金融機関に移管することは可能です。
課税口座に移管後、他の金融機関に移管する場合は、移管前の金融機関の口座種別と移管先の金融機関の口座種別が一致している必要があります。例えば、一般口座で管理しているのであれば、移管先の金融機関の口座種別も一般口座に移管することになります。一般口座から特定口座への移管はできませんので注意が必要です。
NISA口座から一般口座もしくは特定口座に移管する場合は、取引がある証券会社に連絡して、「移管依頼書」を取り寄せ、必要事項を記入して提出する必要があります。
一般口座は年末を過ぎた段階でご自身で年間の取引を集計してご自身で確定申告を行う必要があります。(年末取引報告書の送付なし)、一方で、特定口座の場合は、源泉徴収ありとなしの2つを選ぶことが可能で、源泉徴収ありの場合は、年間取引報告書の内容に基づいて、証券会社が源泉徴収を行ってくれます。源泉徴収なしは年末取引報告書の送付のみで、確定申告はご自身で行う必要があります。
一般口座と特定口座についての詳細は以下に詳しく記載していますので合わせて御覧ください。
評価損がある場合の課税口座への移管は注意が必要
NISA口座から課税口座に移管する場合、NISA口座で管理している投資商品に評価損が生じている場合は注意が必要です。
評価損が生じている状況で、課税口座に移管すると、移管した評価額が買付価格(基準値)として扱われます。そのため、NISA口座で買付を行った価格を基準値にならず、課税口座に移管後に、株価が上昇して売却した場合は、移管後の株価を基準に売却益として課税されます。
課税口座移管後の税金の扱いについても、以下の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
NISA口座で運用している投資商品については、課税口座に移管すると他の金融機関に移管は可能ですが、手続きの手間や課税のことを考慮すると、特段の理由が無い限り、買付を行った金融機関で保管し、目的が達成した時点で売却する運用方法をおすすめします。
これからNISA口座の開設をご検討中の方は、NISA口座で運用すると金融機関の変更は難しいということを踏まえた上で、NISAサービスが充実している証券会社の利用をおすすめします。SBI証券や楽天証券、マネックス証券、松井証券といったネット証券を活用することで、NISA口座での株式の売買手数料が無料となるほか、投資信託も販売手数料無し(ノーロード)の銘柄の取り扱いも充実しています。