第5世代移動通信システム(5G)が2020年3月より国内でも開始されるなど、移動通信においてますます高速な通信サービスに期待が高まっています。5Gは世界的にも関心が高まっており、特に中国勢の動きが活発となっています。今回は、今後の5Gの動向を踏まえた投資戦略を考えてみます。
第5世代移動通信システム(5G)の概要
第5世代移動通信システム(5G)は、伝送速度が10Gbpsから20Gbpsと超高速で通信可能な移動通信サービスです。
現代では携帯電話が一般的に普及しましたが、携帯電話の進化や情報技術の発展に伴い通信サービスのあり方も進化を続けています。一昔前までの従来型携帯電話で用いられていた3G(W-CDMA/CDMA2000)から、スマートフォンが普及しはじめ4G(LTE)を用いた通信が一般的となっています。
4G(LTE)の伝送速度は最大1Gbps前後となっており、周波数は1GHzから3GHz帯の中周波が使われています。5Gはそれの10倍以上となる速度を実現可能な他、周波数も現行の中周波に加え、高周波帯域であるミリ波(28GHz帯)も活用されますので、大容量の通信も可能となります。
NTTドコモの5G活用した建機遠隔操作のデモ(シーテック2018にて筆者撮影)
そのため、大容量のデータを遅延なしにほぼ瞬時の通信を必要とする、機械などの遠隔操作、遠隔医療、自動車の自動運転支援、スマートシティ、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)など、多くの機器が外部ネットワークと接続が可能となり、産業革新が期待されています。
特に、2020年に入って中国武漢市を発症とした新型コロナウイルスの感染拡大が世界各地で広がったことで、在宅勤務の他、遠隔地へのアクセスの重要性が問われたことで、これを機会に5Gの導入需要を後押しするきっかけになることが考えられます。
実際に2020年3月より5Gサービスを始めたNTTドコモ(9437)は、新型コロナの影響で多くの株が売られている中、2020年3月27日時点において、今後の5G需要を期待した買いが入り過去最高値で推移しています。
第5世代移動通信システムは中国勢の存在感が増している
日本のみならず世界的に注目されている第5世代移動通信システム(5G)ですが、中国の通信機器会社など中国勢の存在感が増しています。
国内でも携帯電話通信事業者3社より5Gに対応したスマートフォンの発表が行われましたが、これまで中国メーカーは華為技術以外は国内事業者の取り扱いは見られませんでしたが、今回は、中国国内で人気が高い小米(シャオミ)(1810.HK)やOppo(オッポ)が新たに日本国内で販売を開始しました。
更に、5Gに関する特許を保有している企業は中国勢が多く、三井住友DSアセットマネジメントの調査によれば、華為技術が約2000個、中興(ZTE)(000063.SZ)が1,500個保有しているとしています。また、日本経済新聞の2020年1月5日の電子版の記事によると、中国の5Gの特許出願のシェアは35%となっており、世界で一番多くの特許を出願していることがわかります。
上海市内の中国移動通信営業所(筆者撮影)
中国の携帯電話事業者大手である中国移動通信(0941)は2020年の5G投資計画として1千億元前後としており、2019年より5倍以上の資金を5Gの投資に充てるとしており、サービス提供地域も現行の50都市から300都市まで広げる計画を発表しています。
中国が、5Gの開発に力を入れている背景としては、政府主導で産業政策を進めていることにあります。同国のさらなる経済発展を目指し5Gを活用し産業改革をすすめるほか、人民などの監視強化にも5G技術が大いに活用できるなど、中国政府にとっても国家を統制していくためにも一役買う技術であります。
また、中国は政府が株式を多く保有していることもあり、5G開発において各企業に対して効率的に開発推進ができることも影響していると言えます。さらに、中国市場は世界最大の携帯電話市場を有しており、2018年時点における携帯電話契約者数は約16億件となっています。
中国の5G関連の裾野は広い
国策で5Gの開発を進めている中国ですが、今後も更に世界の5G市場を牽引していくことが予想されます。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり5G需要が一気に拡大する好機であることから、政府による開発推進はさらに強化されるものと考えられます。
5Gは、中国移動通信といった通信事業者や華為技術や中興(ZTE)といった通信基地局や端末供給だけではなく、半導体やプリント基板、アンテナ、光モジュール、基地局管理、その他電子部品のように、5G関連の裾野は広いと言えます。
もちろん、日本国内にも5G関連に部品や設備を提供している企業は多いですが、5Gを見据えた投資を行うにあたり、国内だけではなく、世界にも目を向けて投資先を検討していく必要があると言えます。
中国鉄塔(0788)の過去3年間の株価推移
例えば、携帯電話基地局の設備や土地を管理している中国鉄塔(0788.HK)は中国通信3事業者が共同で出資した会社で、5G需要の増加による増収が期待されています。2019年12月の決算では売上高が764億2800万元となっており、過去5年間で売上高は約8倍となっています。
深圳市信維通信股分有限公司(300136.SZ)の過去5年間の株価推移
深圳市信維通信股分有限公司(300136.SZ)は、携帯電話基地局や端末のアンテナの開発製造している会社で、中国の携帯電話市場の拡大とともに売上を伸ばしています。2018年12月期の決算では売上高が47億700万元と過去5年間で約6倍に伸びています。また、純利益については過去5年間で約15倍に伸ばしています。今後も、5G需要拡大で恩恵が受けられる期待が高まると言えます。
ここに上げた企業はあくまでも例で投資の推奨ではございませんが、このように中国の5G関連も探せば探すほど、多くの企業が取り組んでおり、これらの情報をヒントにより多くの企業を見つけてみると良いでしょう。
中国への投資はサクソバンク証券とマネックス証券がおすすめ
5G関連で今後の成長が期待できる中国株式市場でありますが、国内から中国に投資する場合、取り扱いの銘柄が限られているなど、必ずしも投資がしやすい環境であるとは言えません。
インターネット証券であれば、SBI証券や楽天証券、マネックス証券の他、デンマークの投資銀行「サクソバンク」傘下のサクソバンク証券で取り扱いがあります。
サクソバンク証券 | 楽天証券 | SBI証券 | マネックス証券 | |
手数料 | 0.20% | 0.5% | 0.26% | 0.25% |
上海証券取引所 | 161銘柄 | 235銘柄 | 取扱なし | 取扱なし |
深圳証券取引所 | 97銘柄 | 取扱なし | 取扱なし | 取扱なし |
香港証券取引所 | 1733銘柄 | 719銘柄 | 1500銘柄 | 2058銘柄 |
特に、サクソバンク証券は、香港証券取引所に上場している銘柄が1733銘柄、国内の証券会社では取り扱いがないもしくは少ない、上海証券取引所上場銘柄が161銘柄、深圳証券取引所が97銘柄と、国内の証券会社の中では取り扱い数が2400銘柄以上と最多となっています。
続いて、おすすめできるのがマネックス証券です。マネックス証券もサクソバンクに続いて取扱銘柄数が多く、香港証券取引所上場銘柄のみですが2058銘柄となります。また、同社は中国株と米国株の情報収集が日本語で可能な「銘柄スカウター」を提供しており、マネックス証券に口座を開設すると無料で利用することができます。
サクソバンク証券とマネックス証券における中国株の売買手数料は約定代金に対して0.25%となっており、ネット証券の中では最安値となってります。