近年、日本の株式市場において政策保有株式を削減する動きが目立ちつつあります。また関連して、政策保有株式は問題があるという報道も多く目にします。今回は政策保有株式について解説するとともに、投資する上での問題点について考えてみます。
政策保有株式は株式を持ち合うこと
政策保有株式とは、企業同士が互いの株式を持ち合うことで、安定株主を確保することで、経営の安定化を狙う目的があります。
株式は保有する割合が増えれば増えるほど、企業経営に対する関与度合いが高まります。そのため、多くの割合の株式を互いで保有しあうことで、企業経営を行うに当たり下支えとしての役割を果たすことができます。
しかしながら、近年では政策保有株式の削減が進んでいます。後述していますが、企業統治の向上を目的としており、日本株式市場においても、企業価値を高め、長期的に投資しやすい環境の構築が求められています。
2018年6月に、東京証券取引所が企業統治指針を改定し、その中に政策保有株式の削減が盛り込まれています。
政策保有株を削減することで、市場への株式の流通を活発にし、複数の投資家が経営参加できるようにすることで企業統治の向上に期待できます。
企業側にとっては安定株主確保で経営安定化につながる
政策保有株式は、日本独自の習慣であります。株主が資金を出し合い、その証券として株式を保有する形態の会社である株式会社は欧州で東インド会社が発祥ではありますが、上場企業であれば、本来は誰でも企業の株主になることが可能です。一方で、その弱点として、会社が敵対買収などのリスクも高まります。
日本企業では、敵対買収などのリスクを防ぐために、取引先などで株式を互いに持ち合うことで、経営の安定化を狙います。また、株主総会における議決権を行使する場合においても、持ち合いによる比率が高いと、企業側が提示する経営陣の専任などがしやすくなります。
また、取引における仕入れなどが長期的にできる他、銀行と持ち合うことで、安定的な資金調達も可能となります。
政策保有株式が多いと企業統治の低下で企業価値が損なわれる
企業側にとっては政策保有株式はメリットは高いといえますが、逆に投資する側からすると、政策保有株式が多いと企業統治の能力が弱まり、企業価値が損なわれるリスクがあります。
政策保有株式により、ある株主が大半の議決権を握っている状態となれば、その他の少数株主の意見が通りにくくなるほか、経営の監視機能が低下し、後々大きな不祥事につながるなど、企業価値の低下に繋がる要因となります。
更に、政策保有株式が多ければ、利益還元についても多くの株式を持っている投資家に、その利益が流れてしまうことで、結果として少数の株主への利益還元が少なくなり、自己資本利益率(ROE)の低下に繋がります。
上場企業は、株式公開することで、多くの株主から資金を調達を行い、さらなる成長に向けた事業投資などに振り向け、そこで得た利益を株主に還元することが求められます。日本企業の場合は、株式市場は単なる資金調達の場としての認識しかなく、株主軽視の体質があるのも事実であります。
株式の持ち合いで大半の株主が株を握りしめている状況となれば、本来の株式公開の意味に反しており、企業価値の観点から政策保有株式は減らしていくべきであると考えています。