企業は多くの従業員を抱えることで事業活動を大きく行うことができますが、経営の状況によって人員削減を行うことがあります。今回は上場企業が人員削減を行った場合における株価への影響を考えてみます。
上場企業が人員削減(リストラ)を行う理由
企業は、事業環境が悪化した場合、リストラの一貫として人員削減を行う場合があります。
「リストラ=人員削減」と考えている方もいらっしゃいますが、リストラは人員削減の意味ではなく、英語の「Restructuring(リストラクチャリング)」を簡略化して日本語のカタカナ語として表記しており、企業が事業活動を行う中で、不採算事業の縮小や撤退、統廃合といった、事業内容を整理する意味になります。逆に、利益が出ている事業などに経営資源を集中させていくことになります。
企業は、その一環として人員削減を行うことがあり、今日の日本で考えられているように、従業員を解雇する、希望退職を募るなどして、人員を減らす他、不採算部門の人員を配置転換することも含まれます。
人員削減を行う理由としては、前述したとおり不採算事業を整理する一貫で、人員に余剰が出た場合に削減することで、人件費を減らし、採算がとれる事業を集中させることで、利益確保を行うものです。
欧州や米国では、日本企業とは異なり、利益確保のためによく行われる手法ですが、国内では労働法などの基準で簡単に人員を解雇できないなど積極的に行う企業は少ないですが、2008年の金融危機や2020年の新型コロナウイルス感染症拡大による需要減少などによる経営悪化により、人員削減を行う企業も増えてきています。
上場企業が人員削減を行えば株価は上がる
上場企業が人員削減を行うことを明らかにした場合、基本的に株価は上がります。
前述したとおり、人員削減を行うことで、従業員に支払う給料の支払額が減ることになりますので、これまで以上に利益確保が期待できます。
そのため、利益がより多く確保できることになれば、経営環境の改善につながることが期待されるとともに、株主に支払われる配当金も増えることも期待されます。
そのため、人員削減を行えば、基本的に株価は上がると考えておくと良いでしょう。
日本企業は人員削減を行っても株価は上がらない場合もある
人員削減を行うと、企業側が支払う人件費が削減できますので、利益期待で株価は上がりますが、人員削減を明らかにしたという理由で必ずしも株価が上がるわけではないことにも留意が必要です。
特に、日本企業の場合は、人員削減を行う場合は、最終的な手段として行う場合も多く、経営環境が悪化した場合は、始めに、目先の経費を削減する、設備の削減といった、人件費以外に発生する費用の削減から始めます。
そのため、株式市場においては、経営環境が悪化して、株価が下落するものの、これらの費用削減である程度株価は回復基調となるものの、そこに更に、人員削減が加わったとなれば、予想以上に経営環境が悪化していると懸念されることで、株価が下落するという状況はよくあります。
また、欧州や米国においても、機関投資家の間では、単純な利益だけを追求するのではなく、地球環境や人権などに配慮して社会的な責任も追求する企業を選定するESG投資を重視する傾向も強まっており、人員削減を頻繁に行うと、従業員を大切にしていない企業と判断され、結果として、機関投資家を中心に売却が相次ぎ、結果として株価が下落することも考えられます。