日本政府は2019年10月18日に会社法改正案の閣議決定を行いました。上場企業の企業統治(コーポレートガバナンス)を強化することを目的としており、日本企業においても、より一層企業価値向上が求められることになります。
今回の会社法改正案のポイントを見ていきます。
社外取締役の選任を義務化
18日に閣議決定された会社法改正案における、最大の焦点は上場会社に対して社外取締役の選任を義務化することになります。
2019年時点においては、東京証券取引所に上場している企業においては約98%が社外取締役を置いていますが、有価証券報告書を提出する義務がある上場企業に対しては、社外取締役を必ず置くようにするものです。
日本企業においても社外取締役の選任は普通になってきていますが、元日産自動車のカルロス・ゴーン氏の問題などを受けて、社外取締役が機能していないという実態が浮き彫りとなっています。日産に限らず、なんとなく社外取締役を設置しているという企業もあるのも事実です。
社外取締役は東京証券取引所が定める企業統治指針に基づいて、経営から完全に独立している必要があります。
取締役に対する報酬内容についても規定
上場企業の取締役の報酬内容に関する規定も盛り込まれます。これまで、上場企業における取締役の報酬内容については、代表取締役が決めることが一般的でしたが、今回の改正案では株主総会において限度額を定め、それぞれの配分について株主総会での説明が求められます。
元日産のカルロス・ゴーン氏についても、兼ねて高額報酬が指摘されていました。有価証券報告書においては1億円以上の報酬を得ている者のみが氏名の記載がありますが、どの企業においてもその決め方は不透明であり、株主にとっても納得しづらい部分も多くありました。
今後、上場企業が取締役の報酬のあり方をどのように説明し、株主に納得させるのか注目です。
株主代表訴訟における役員の賠償責任の補償についても明確化
近年株主代表訴訟が増加ししていることを背景に、上場企業役員への損害賠償のリスクが高まっている現状があります。
今回の改正案において、賠償責任が生じた場合、弁護士費用や賠償金を企業側が補償できることを明確にします。
株主提案は1人10議案までに制限
株主総会において、株主提案権を有する株主より複数の議案が提示されるケースも目立っています。
株主提案権は、議決権の1%以上もしくは300個の議決権を有する株主に与えられる権利で、企業経営に対すて提案を行い総会で議論を行います。
しかしながら、日本の場合、提案できる件数について上限が定められていないことや、明らかに常識を反した提案が行われることも珍しくなく、提案権の乱用も問題となっています。米国では提案できる件数は1人1件までとしており、明らかに常識に反した内容については拒否することができます。
そこで、今回の改正案にて株主提案は1人10議案までとし、内容についても成約を定め、常識に反した提案や、侮辱行為など総会運営に支障が出る提案を規制することができるようになります。
株主総会の招集通知の電子開示が可能に
株主総会が行われる場合、あらかじめ総会が開催される3週間前を目安に、株主の住所あてに書面で招集通知が郵送されます。今回の改正案により電子的な開示が可能となります。
これまで招集通知については、書面による通知が義務化されていましたが、近年ではインターネットの普及などにより、書面の必要性についても低下しているのも事実です。
電子的な通知が可能になれば、株主としても開示されてからすぐに内容を確認することができることに加え、企業側としても印刷コストなど膨大なコストを減らすことが可能となります。