近年では、日本国内においても投資の重要性が叫ばれる中、株主還元を積極的に行う企業も増えており長期保有で資産形成しやすい環境になりつつあります。個人が長期投資するのであればNISA制度を活用して税優遇を受けるのもポイントです。今回は、NISAにおいて長期投資に向いている銘柄の特徴を紹介します。
日本株は長期投資が難しいのが現状
政府は2014年1月より個人の資産形成と経済成長を両立させるべく、年間120万円までの投資で得た売却益と配当金が非課税となる制度「少額投資非課税制度(NISA)」を創設し、これまで貯蓄が一般的だった個人の資金運用を株式などに振り向ける施策を投入しています。
また、個人が資産形成を行うためには、企業においても企業価値を向上させることで、収益を向上させることで株価の上昇、配当金など株主還元を充実させる必要があります。政府でも国内企業に対してコーポレート・ガバナンス体制の強化に向けて動くなど、国内の企業においても企業同士で株式の持ち合いが多くありましたが、徐々に解消する動きも出始め株主への還元を強化する企業も出始めています。
日本株式市場においても個人をはじめ将来的な資産形成が行いやすい市場に変わってきていますが、日本株は製造業など外部景気に左右されやすい事業環境ということもあり、長期投資で資産形成が難しいのも現状です。ただし、日本においても長期投資で資産形成が行える銘柄も存在しており、特徴を抑えることで長期投資も可能となります。
利益水準が高く好業績な銘柄
NISAを活用して長期投資を行う上で一番重要な銘柄の特徴として、まずは利益水準が高く好業績な銘柄を選ぶことが重要です。株式投資を行う上では当たり前のことですが、これは景気が良いときだけではく、景気が悪いときも業績を大きく落とすことなく、全体的に右肩上がりで成長していることを見極める必要があります。
例えば、過去10年間の売上と営業利益、純利益を調べ、過去のリーマンショック時など景気が悪化したときにどのように変動したのかをしっかりと調べておく必要があります。
また、重要な指標としては、売上高に対してどれだけ本業で稼いだ利益が得られたかを示した「営業利益率」に注目します。日本企業は5%前後とやや低いのが現状ですが、目安として通年で10%から20%稼いでいれば優秀であると言えます。
さらにもう一つ「自己資本利益率(ROE)」の数値にも注目します。投資家から預かった資金でどれだけ利益を上げたかを示す指標で、株主から預かった資金をどれだけ効率的に活用して利益を出しているかを示します。日本企業のROEは8%前後ですが、目安として10%以上あれば良いと言えます。
外部環境に左右されにくい内需株
長期投資を行う上で、外部環境に左右されにくい内需株が最適であると言えます。前述しましたが、日本企業は物を作って外国に売ることで収益を上げる事業構造となっておりますので、世界景気の動向に左右されやすい特徴があります。さらに、為替の変動によっても収益が大きく変わる特徴があります。
また、金利の動向に左右されやすい銘柄や原油価格など商品価格の変動に左右されやすい銘柄についても長期投資には不向きであると言えます。
そのため、長期投資を行うには、景気や為替、金利、商品価格など市場動向に左右されにくい内需株を選ぶと良いと言えます。内需株に多いのが情報通信関連で、ソフトウェア開発やウェブサイトの開発、ECサイト運営などを行っている企業が外部環境に直接大きく影響されにくいと言えます。
ただし、株価収益率(PER)が高いなど業績に対して期待値が高く株価がすでに高い状況であることもあり、期待に反することが発生した場合、大きく株価が下がることも予想されますので、PERが15倍程度と日経平均株価と同平均水準であることも合わせて確認しておくと良いでしょう。
株主還元に積極的な銘柄
NISAで運用する場合は、配当金を支払いや自社株買いなど株主還元に積極的な銘柄であることも重要です。また、日本企業であれば株主優待も実施している企業も多くあり、長期投資を行う場合にも重要な要素となります。
NISAは損失が発生した場合、その段階で利益を確定した場合損益通算ができません。もちろん、評価益が出るまで持ち続けることが理想ですが、何かしらの理由で売却する可能性がある場合、損失部分について何かしらの優遇措置があるわけではなく、NISAの非課税の恩恵が受けられなくなります。それであれば、特定口座を利用して確定申告にて損益通算を行ったほうが節税となることも考えられます。
そのため、運用中においてもNISAの恩恵を受けるには配当金を支払っていることも合わせて確認しておくことが重要です。配当金は各企業のIRページで過去5年間の支払い額が確認できる他、目先の配当については決算短信で確認できます。また、日経会社情報や四季報にも記載されています。
企業が純利益からどれ位の割合配当金を支払っているかを示す「配当性向」を確認することも重要です。配当性向は低い高いで良し悪しを判断することは難しいですが、今後の事業成長のために投資が必要なのであれば配当性向は低くても問題ないと言えます。ただし、あまりにも高すぎると、事業成長のための投資や人件費などを抑えていることも考えられ今後の成長の持続性も疑問視されます。
そのため、投資を検討している企業の事業方針をしっかりと理解した上で今の配当性向が妥当なのかを確認しておく必要があります。