1株単位での株式売買実現に伴う制度変更の概要を詳しく解説

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東京証券取引所は、これまで1単元あたり100株としていた売買単位を1株から売買可能にできるよう新制度を検討していることを明らかにしています。今回は、東証が検討している1株単位の売買実現に向けた制度概要について詳しく解説します。

2019年4月時点では1単元100株で売買可能だが若年層など取り込みが課題

日本における株式市場では、これまで1単元での売買を基本としており、銘柄によって1単元が1000株、100株などバラバラに設定されていました。

しかしながら、銘柄によって必要投資資金が分かりづらいことや、政府も経済成長を持続させるためにも、株主主体となった経営を促すべくコーポレートガバナンス体制の強化に伴い、株式の持ち合いなどの解消を促すことや、個人マネーを株式などに振り向けてもらうことで、市場への資金循環を強化させるためにも、だれでも投資がしやすい環境を構築するにあたり、2018年10月より売買単位が100株単位に統一されました。

売買単位が1単元100株に統一されたことで、東証が推奨している投資金額である50万円前後を概ね達成することはできていますが、資力が少ない若年層への投資の取り込みにはなお課題があるのも事実です。

日本預託証券(JDR)の仕組みを活用して1株単位での売買を実現

東証が株取引の売買単位を1株あたりから実現するにあたり、既存の日本預託証券(JDR)の仕組みを活用することで検討しているとしています。

日本預託証券(JDR)とは、外国の株式を日本国内で円滑に流通させる目的で、受託有価証券として日本国内の信託法に基づいて発行される有価証券です。信託銀行が株式の発行者から有価証券を受託し、それを預託証券として市場に流通させることで、直接売買できない外国株式などを国内においても国内株同様に売買できるものです。

そのため、信託銀行などが該当の株式を取りまとめることで、預託証券として1株からでも売買できるように市場に流通させる仕組みとなります。

現状においては、ネット証券を独自で単元未満株を売買できるサービスを提供している金融機関もあります。

SBI証券が「S株」、マネックス証券が「ワン株」という名称で1株単位で売買できる単元未満株の取引サービスを提供しています。また、PayPay証券など小口売買に特化したサービスの提供も増えています。これらは、市場から直接買い付けるのではなく、あくまでも金融機関が仕入れた対象の株式を単元未満株として小口で販売しているものになり、金融機関独自のサービスとなっています。

日本株の場合、1単元あたりの株式数が決められており、投資を始めるのにある程度のまとまった資金が必要ですが、単元未満株(ミニ株)を使うことで、1万...

今回の日本預託証券(JDR)を活用することで、信託銀行が株式を購入し、小口で売買できる仲介役を担うこととなり、証券会社を問わず利用できるようになることが期待できます。サービスの開始時期については2020年度の導入を目指したいとしています。



株主総会での議決権は従来どおり100株から、配当金の受領は可能

1株単位で株式の売買が可能になりますが、株主総会での議決権の行使については従来どおり100株以上保有している必要があります。

ただし、100株未満でも配当金の受領は可能であり、保有する株式数におうじて配当金が受け取れます。一方で、日本の企業は株主優待を実施している企業が多いですが、前述した単元未満株においては多くの場合株主優待が受けられませんが、こちらも、引き続き100株以上など指定した単元数を保有している株主に提供することが予想されます。

日本株は、1単元あたり最低でも100株必要で、銘柄によっては数十万円から数百万円の資金が必要になるケースも多いです。単元未満株(ミニ株)を利用す...

若年層への投資拡大や新たなフィンテックサービスの登場に期待

東証が1株単位での売買を実現できるとなれば、少額からの投資が可能になることから、若年層への株式投資の拡大にも寄与することが予想されます。

株式投資は、前述したとおり1単元とあらかじめまとまった金額が必要な部分からハードルが高いとされていた要因でも有りましたが、これが解消されることで、試しに売買してみるという需要も広がり、結果として投資をはじめるきっかけづくりにも繋がりそうです。

また、1株単位で売買可能になることから、新たなフィンテックサービスの登場にも期待できるなど、個人マネーの株式市場への流入と金融サービスの活性化にも寄与しそうです。

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