確定拠出年金(iDeCo)は、個人の老後の資産形成を後押しする目的で、公的年金に上乗せして運用する年金制度です。ただし、既存の年金制度と紐付けられていますので転職をした場合など必要に応じて手続きが必要になります。今回は、個人向け確定拠出年金(iDeCo)運用中に転職した場合の手続方法を解説します。
確定拠出年金(iDeCo)は公的年金に上乗せして老後資金を運用
確定拠出年金は、2017年1月より既存の公的年金に上乗せして老後に必要となる資金を運用する目的で導入された年金制度です。
これまでは、加入対象者が限られていましたが、既存の年金制度に加えてより効率的に運用を行うべく確定拠出年金の加入対象者が拡大しました。
そのため、個人の意思に基づいて、金融機関と契約を結び、運用商品を選ぶことで誰でも確定拠出年金の運用を始めることができます。ただし、一般的な投資とは異なり、あくまでも資産運用であり、年金制度の一部となりますので、個人の就業状況などを届け出る必要があります。また、職業が変わるなど個人情報に変更がある場合は速やかに届け出る必要があります。
これまで、手続きを行わなかった場合、転職した時点で6ヶ月以上経過した場合、これまで運用してきた投資商品を国民年金基金連合会にて現金化した上で移管されることになっていましたが、2018年5月の制度改正において運用商品はそのまま移管されるようになりました。ただし、手続きを行わないと正しい運用ができないなど何かしらの弊害が生じる場合がありますので必要な手続きは行う必要があります。
就業先の変更は事業所の変更届けを提出する必要がある
会社員のまま、就業先企業の変更を伴う「転職」を行う場合は、転職先などによって運用方法が変わる場合がありますので、取引がある金融機関に連絡して、は「加入者登録事業所変更届」と「事業主の証明書」を提出する必要があります。
詳しくは後述していますが、転職先において企業型の確定拠出年金制度を導入している場合、引き続き、個人型確定拠出年金(iDeCo)を併用する場合など、毎月の掛け金の上限額が1万2,000円から2万円となります。(企業年金なしの場合は2万3,000円)
そのため、就業先を変更した場合は、必ず取引がある金融機関に連絡して必要書類を取り寄せて、必要事項を記入後、金融機関に返送します。
転職先に企業型確定拠出年金が無い場合や自営業者、公務員の場合
これまで個人型確定拠出年金(iDeCo)で運用していて、転職先の企業において企業型確定拠出年金がない場合や、自営業や公務員として就業する事になった場合は、引き続き個人型確定拠出年金(iDeCo)で運用することが可能になります。そのため、これまで運用していた運用商品はそのまま引き続き運用を継続できます。
会社員から会社員と職業が変わらない場合は、前述した通り、事業所変更届に必要な書類に必要事項を記入して金融機関に提出を行います。
会社員から自営業になる場合、公務員となる場合など職業が大きく変わる場合は、職業によって月々の掛け金が変わりますので、取引がある金融機関に連絡して「被保険者種別変更届」を届ける必要があります。
公務員:1万2,000円
専業主婦(夫):2万3,000円
自営業:6万8,000円
転職先に企業型確定拠出年金がある場合
転職先に企業型確定拠出年金制度がある場合、企業側で個人型確定拠出年金(iDeCo)の併用を認めている場合と、認めていない場合があります。認められていない場合は企業型確定拠出年金に一本化する必要があります。そのため、転職先の担当者に併用可否と手続き方法を確認する必要があります。
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の併用が可能な場合
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)の併用が可能な場合において、引き続き個人型確定拠出年金(iDeCo)の運用を継続するのであれば、前述したとおり、取引がある金融機関に連絡して、「加入者登録事業所変更届」と「事業主の証明書」を提出します。
企業型確定拠出年金制度がある場合は、毎月の掛け金の上限が変更となり、上限を超える掛け金については、上記手続きを行ったあと自動的に現金化されます。
企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金(iDeCo)が併用不可能な場合
企業型確定拠出年金を導入している場合において、併用が認められない場合や、企業型確定拠出年金に一本化したい場合は、企業の担当者と相談して、手続きを進めていく必要があります。
既存の個人型確定拠出年金(iDeCo)で運用していた資産については、転職先の担当者より「個人別管理資産移換依頼書」の用紙を渡されますので、必要事項を記入し提出することで、企業が委託している運用会社側で自動的に資産の移行が行われます。資産の移行は約2ヶ月の時間を要します。