株主への還元策として配当金の支払いの他、自社株買いがあります。自社株買いは自社で株を購入することで株価にとっても良い影響を与えます。今回は、自社株買いとは何か、また、株価にとって良い影響になる理由を解説します。
自社株買いとは?
自社株買いとは、文字の通り、自社が発行している株式を市場から買い戻す行為です。
企業は、資金を調達するために株式を発行しています。詳しくは以下の記事でも解説していますが、株式を発行することで資金を調達し、資金を提供した方に株式を付与します。
株式を保有していることで、対象企業への経営に関与できる他、企業が稼いだ利益などを配当金などを通じて受益できる権利が持てます。
企業が自社株買いを行うことは、配当金の支払いとい並んで既存の株主に対する株主還元策の1つとなります。ただ、自社株買いを行っても、配当金とは異なり金銭を受け取ることはありませんので、あまり還元されたという実感はありませんが、PER(株価収益率)が改善されることで、株価を押し上げる効果があります。
自社株買いでPERが下がり、株価上昇に期待できる

自社株買いを行うことは、既存株主に対する株主還元策の1つであることをお伝えしましたが、自社株買いを行うことでPERが改善され、株価を押し上げる効果が期待できることにあります。
PERとは、Price Earnings Ratioの略で、日本語で言い表すと「株価収益率」と表現することができます。現在の株価に対して、1株あたり利益の何倍まで買われているかを示す指標です。数値は倍率で表記しますが、倍率が上がれば上がるほど株価は割高と判断できます。
PERは、現在の株価に対して、1株あたりの当期純利益を割って算出します。例えば、当期純利益が5,000万円で、発行済みの株式数が100万株、現在の株価が1000円と想定した場合、まず、1株あたりの当期純利益を5,000万円÷100万株で算出すると50円となります。現在の株価である1,000円に対して50円を割ると、PERは20倍であることがわかります。
PER:1,000円÷50円=20倍
ここで、自社株買いを行った場合を考えてみると、例えば、10万株の自社株買いを行った場合、市場で発行されている発行済み株式数は90万株に減ります。自社株買いを行った後の1株あたりの当期純利益を計算すると、5,000万円÷90万株で約56円となります。ここからPERを求めると、現在の株価1,000円に対して、一株あたりの当期純利益約56円を割ると、PERは18倍となります。
自社株買い後のPER:1,000円÷56円=18倍
PERは、数値が低くなれば低いほど割安と判断され、業績の変動がなければ妥当な水準まで買い戻しが期待できます。自社株買いを行って一株あたりの純利益が56円となれば、56円に20を乗算すると、1,120円前後まで株価が上昇する余地があることがわかります。
個別企業のPERは、日経会社情報や四季報で確認できる他、SBI証券や楽天証券
、マネックス証券などのネット証券を通じて確認することができます。
自社株買いでROE(自己資本利益率)の改善にも期待

自社株買いは、PERを改善して株価を押し上げる効果の他に、自己資本利益率であるROEの改善にも期待できます。
ROEとは、Return On Equityの略で、日本語で言い表すと「自己資本利益率」と言います。株主から預かった資金でどれだけ収益を稼いでいるかを示す指標で、パーセント(%)で表記します。数値が高ければ高いほど株主から預かった資金を効率よく活用して収益を上げていることがわかります。
自社株買いを行った場合、どれだけROEが改善するかを先程の例で説明すると、自社株買い前の状態で当期純利益が5,000万円で、株主資本が5億円だとした場合、ROEは5,000万円÷5億円×100で10%となります。
ROE:当期純利益5000万円÷株主資本5億円×100=10%
その後、自社株買いを行い、株主資本が4億円に減少した場合、ROEは5,000万円÷4億円×100でROEは12%となります。
ROE:当期純利益5000万円÷株主資本4億円×100=12%
ROEの数値が高いと、株主から預かった資金を効率よく活用していることが伺えますので、投資家からも好感が得られることに繋がり、結果として多くの投資家から投資対象として選ばれることになります。
個別企業のROEは、日経会社情報や四季報で確認できる他、SBI証券や楽天証券
、マネックス証券などのネット証券を通じて確認することができます。
ROEについての詳細は以下の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。