日本株は、為替レートに左右されやすい特徴があります。そのため、株価以外にも為替の動向も合わせて確認するを行うことが重要になります。今回は、日本株は為替に影響される理由と、為替と株価の関係について解説します。
為替レートが変動する理由
日本円対米ドルの為替レート推移(筆者作成)
為替レートは、需要と供給に基づいて変動をしています。例えば米ドルの場合、日本円を売って米ドルを買う動きが増えれば為替レートは円安となります。逆に、米ドルを売って日本円を買う動きが増えれば円高となります。
通貨が買われる理由としては、日本や海外から輸出入などにおいて国境を超えて商品やサービスを購入や、日本や海外からの投資などによる国際収支の他、金利変動によって金利が低い通貨を売って、金利が高い通貨が買われることもあります。また、戦争やテロなどによる地政学リスクにより安全な国に資産を移転するなどの動きが加速した場合も為替変動に影響します。
為替の変動要因についての詳細は以下の記事で解説していますので合わせてご覧ください。
為替レートが円安になると製造業などの輸出関連株は上昇する
為替レートは需給関係に応じて変動していますが、為替レートが円安となった場合、株価が上昇する銘柄として電気や自動車といった製造業などの輸出関連株が該当します。
日本は豊富な資源に恵まれた国ではなくお金を稼ぐ手段は限られているのが現状でした。そのため、「物を作って売る」ことが一般的な商売のあり方として定着してきました。日本の伝統的な産業である電気や自動車を中心とした製造業では、販路を国内だけではなく、海外にも広げるために、海外に輸出する必要があります。そのため、電気や自動車は輸出関連株として分類される場合があります。
例えば、自動車1台を1万ドルで輸出した場合、1ドルが120円の時と100円のときでは日本円に換金した金額は大きく異なってきます。1ドル120円であれば日本円に換算したすると120万円になるのに対し、1ドル100円であれば100万円となり、円高になると日本円ベースで20万円減少することになります。
そのため、為替レートが円安になれば、製造業などの輸出関連企業にとって得られる収益は大きくなり株価が上昇要因となります。
為替レートが円高になると内需株や輸入関連株が上昇する
一方で、為替レートが円高になった場合、輸出関連株は下落しますが、逆に、飲食業や小売業、食品製造業、通信業といった日本国内で事業を展開している内需株や、電気やガス、石油など海外から商品を輸入して販売している輸入関連株は上昇することになります。
内需株の場合は、事業において日本国内のみで完結している場合も多いことや、仕入れの一部で海外から輸入することもありますので、為替が円高になれば、収益面においても有利になります。
また、電気やガス、石油といった資源を国内に輸入して、日本国内で事業を展開している輸入関連株においても円高になれば、安く資源を調達することができるメリットにつながります。ただし、輸入関連株は為替だけではなく資源価格の動向にも左右されますので注意が必要です。
参考として原油価格と株価の関連性について以下の記事で紹介していますので合わせてご覧ください。
内需株や輸入関連株は、為替や景気に大きく影響されないことから、これらの銘柄のことを「ディフェンシブ銘柄」とも呼ばれます。
日経平均株価は輸出関連株の組み入れ割合が多い
為替レートが円高になると、日本株が下がる要因であると思われる背景として、円高になると日経平均株価が下がりやすくなることにあります。
日経平均株価は、日本の株式相場を客観的に示す指標として用いられている指標として、東京証券取引所に上場している225銘柄の平均値動きを示したものですが、日経平均株価に採用されている銘柄の多くが輸出関連株の割合が高いことにあります。
2018年6月時点における日経平均株価の採用銘柄数を業種10位まで見てみると以下の通りとなります。
1位:電気機器27銘柄
2位:化学17銘柄
3位:機械16銘柄
4位:非金属機器12銘柄
5位:食品11銘柄
6位:銀行11銘柄
7位:自動車10銘柄
8位:医薬品9銘柄
9位:建設
10位:鉄道・バス8銘柄
225銘柄の内、電気機器が27銘柄、機械が16銘柄、自動車が10銘柄など輸出関連企業の割合が高いことが伺えます。また、電気機器や自動車の場合、他の業種に比べて企業規模も大きいこともあり、収益なども他の企業に比べると金額が多くなりますので、為替が円高になると、その影響を強く受けることになります。