外国株など、外貨建の資産に投資している場合、単純に資産価値だけではなく為替レートを加味して投資判断を行う必要があります。そもそも何故為替レートは変動しているのか、今回は為替レートが変動している要因について解説します。
為替レートは需給関係に応じて変動する
2007年から2018年までの日本円対米ドルの為替レート推移(筆者作成)
為替レートは、需給関係に応じて常に変動しています。例えば、円を売って米ドルを買う動きが増えると、円安・米ドル高となります。逆に、米ドルを売って円を買う動きが増えると、円高・米ドル安となります。
普段日常的にスーパーマーケットでお買い物をしている場合において、値付けされている価格も同様です。例えば、天候不良で野菜の出荷が減ると野菜の供給量が減ることになりますので、野菜の価格を上げることで需要を減らしているわけです。
通貨や野菜、商品にしても、無限大に供給できるわけではなく、供給できる量は限られますので価格を変動させることで、そのものに対する需要を調整する役割があります。
金利の変動による影響
為替レートが推移する要因としては、金利変動のよる影響があります。金利は、お金のレンタル料に該当するものですが、基本的に通貨は低金利通貨から高金利通貨に流れる傾向にあります。
高金利通貨を買うことで、低金利通貨を保有してる場合と比べ得られる金利が増えますので、運用を行う上で高金利通貨に流れるのは自然なことでしょう。
現在、日本円はマイナス金利政策により低金利状況が続いていますが、それ以前も金利は低い状況が続いていたこともあり、一時期個人の間でも資源国通貨である豪ドルの人気が高まり、円を売って豪ドルを買う動きがありました。また、近年では、米国の利上げが叫ばれていますが、2018年5月中旬に米長期金利10年が一時3%を超えたことから、円を売って米ドルを買う流れが増加したことで、対米ドルで111円半ばまで推移しました。
国際収支による影響
国際収支による影響も為替変動の要因となります。国際収支とは、外国間でやり取りされるお金のことで、主に経常収支と資本収支の2つがあります。
経常収支は、輸出入などで外国に支払うお金や逆に外国から支払われる場合における差額、海外旅行や保険などで支払うもしくは支払われる場合における差額のことです。資本収支は、有価証券や直接投資を行う場合における差額のことです。
対外国との間で実際にやり取りされる資金移動も為替レートの変動に影響しています。また、日本企業が海外の企業を買収する場合にも為替変動に影響を与えます。
経済指標による影響
経済指標による影響は、FXなどを行っている場合は特に意識する方は多いかと思いますが、米雇用統計といったマクロ経済の現状を数値化して発表された後に、為替が一方方向に動くことがあります。
経済指標は経済的な動向を判断するための重要な投資判断材料となるため、ロイターといった金融経済情報提供者が予想値を公開し、それに基づいて為替に織り込まれます。ただ、予想を外れた場合、織り込まれた為替レートと発表された数値に対して乖離が生じてしまうため、それを穴埋めするために為替が一方方向に動きます。
政治や戦争、テロなどの地政学リスク
政治リスクや戦争、テロといった地政学リスクも為替レートの変動の要因にもなります。例えば、海外で政治不安や戦争、テロなどの有事が発生した場合、該当国から資本が流出し、該当国と全く無関係の国に資本が集まることになります。
中東などで度々紛争が起きることがありますが、一昔前までは中東で有事が発生すると、米ドルに資金が向かう動きが見られていましたが、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロが発生して以降、その構図は変わり、米ドル外の安全通貨として円が買われる動きが見られるようになりました。
中短期的な投資資金の流入出
中短期の投機もしくは投資資金の流入出による影響もあります。例えば、投資ファンドが国外の株や債券などの有価証券を購入する場合や、銀行や証券会社、投資ファンドによる為替ディーラーにおける為替の売買や個人投資家における外国為替証拠金取引(FX)の取引も少なからず影響します。