原油価格が高騰すると、ガソリン代が高くなり足元の日常生活に影響を受けます。そのため、経済全体としても影響も無視できず株価への影響も見られます。今回は、原油価格の変動が株価へどのように影響するのか解説します。
原油価格は需要と供給に基づいて変動する
原油価格は、需要と供給に応じて価格が変動しています。例えば、石油の需要が増えた場合は原油価格は上昇し、逆に、需要が減った場合は価格は下落します。
特に、北半球では冬場になると暖を確保するために、石油は必須な燃料となりますので、価格が上がりやすくなります。また、石油は中東を中心にで採られることから、中東情勢が悪化した場合も、石油の入手が困難となることが予想されることから価格が上がりやすくなります。
これまでの原油価格はジェットコースターのように乱高下していた
WTI Spot Price(アメリカ合衆国のエネルギー省のデータを元に筆者作成)
過去から現在までの原油価格を見てみると、ジェットコースターのように乱高下していることがわかります。過去10年間における最高値は、2008年7月に1バレル145ドルを記録しています。しかしながら、その後、米大手金融リーマン・ブラザーズの破綻によって世界中が大不況に陥る「リーマン・ショック」によって、2008年12月には原油価格は1バレル30ドル台まで急落しました。
その後は、徐々に価格は上昇し2010年に入ると、リーマン・ショックの影響が抜けきれない先進国に代わって、新興国の経済成長が注目されるようになったことから、原油価格が1バレル100ドルまで回復しました。ただ、その後は、持ち合いの状況が続き、2015年に入ると、米国のシェール革命によって中東への依存度が下がったことと、新興国経済の成長鈍化が叫ばれたことにより、1バレル20ドル台まで下落しました。
その後、徐々に価格は回復し、2018年5月時点では1バレル70ドル前後で推移していましたが、2020年に新型コロナウイルスによる感染症が世界中に拡大したことで、航空需要の減少などで石油需要が一気に減少したことで、一時マイナスに転じるなど大幅な下落に見舞われました。
原油価格が上昇すると原材料調達価格が上昇し株価の下落要因に
原油価格の上場における株価への影響ですが、基本的に原油価格の上昇は株価へのマイナス要因となることが多いです。原油価格が上昇した場合、原材料の調達価格が上昇することになりますので、我々が使っているガソリンや灯油など燃料価格や、プラスチック製品の商品価格にその影響が現れ、最終的にその上昇した価格を負担するのは、消費者となります。
価格が上昇したことで、消費者が消費を控えてしまうことにつながり、その行動が長期化することで経済成長を鈍化させてしまうことが考えられるわけです。
そのため、電気やガス、運輸、製造業といった幅広い業種の株価が下落することになります。特に、原油価格の上昇で下落する業種として有名なのはANAホールディングス(証券コード:9202)や日本航空(証券コード:9201)といった空輸株で、飛行機は原油をベースとしたジェット燃料を使っており、原油価格が上昇すると燃料の調達コストが高くなってしまい業績への影響が懸念されます。そのため、原油価格が上昇すると、多くの航空会社では、国際線において航空運賃とは別に、燃料コストを利用者に上乗せして請求する「燃油サーチャージ料」を徴収します。
石油関連など原油を調達している企業の株価は逆に上昇する
原油価格が上昇すると、株価への下落要因となりますが、逆に石油などのエネルギーを再販している企業の株価は上昇します。
我々が身近にあるガソリンスタンドを経営している、JXホールディングス(証券コード:5020)といったエネルギー関連の企業の株価は、原油価格が上昇した場合、上昇分を上乗せして再販できるため、多くの収益が期待できます。また、資源を取り扱っている三菱商事(証券コード:8058)といった商社株も原油価格が上昇すると、その分収益が多くなることに期待できるため、株価が上昇します。