東京証券取引所は2018年7月2日より上場投資信託(ETF)の売買制度として「マーケットメイク制度」を導入することを明らかにしています。マーケットメイク方式を導入することにより、ETFの流動性が高くなり、多くのETFが売買しやすくなると言えそうです。
これまでのETFは証券取引所を通じたオークション方式を採用
上場投資信託(ETF)は、これまで当サイトで何度か取り上げていますが、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)の値動きに連動した投資商品で、証券取引所を通じて個別株を同様に取引ができます。
https://kabutoshimichi.com/2018/01/05/etf/
上場投資信託も一般の投資信託と同様に専任の運用会社が運用を行い、連動する対象の指数にわせて現物株を保有します。運用会社は、それらを一つの投資信託として上場させることで、投資者は証券会社などを通じて売買することができます。ただ、これまでのETFの取引は証券取引所を通じて取引を行う「オークション方式」となっていました。
オークション方式の仕組み(筆者作成)
オークション方式では、価格優先の原則と時間優先の原則の2つの原則に基づいて取引が成立し、値段を指定して購入する指値注文に比べ値段を指定せずに購入する成行注文のほうが優先して約定します。
また、証券取引所を通じて取引をするため、原則として午前9時から昼休みを挟んで午後3時までの間に売買が可能となっており、PTSなどを除くと取引ができる時間は限られていました。
証券取引所の仕組みやオークション方式の詳細については以下の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
マーケットメイク制度で証券取引所以外からETFの購入が可能
今回、東京証券取引所で導入が進められているマーケットメイク制度は、マーケットメーカーとよばれるETF予め保有している業者から投資家が直接ETFの売買が可能になります。
FXのマーケットメイク制度の仕組み(筆者作成)
マーケットメイク制度は、2018年4月5日の記事で詳しく解説していますが、既に外国為替証拠金取引(FX)や仮想通貨取引所などで採用されており、FX業者が通貨を在庫としてあらかじめ保有しておき、本来の相場に合わせて手数料を上乗せして、投資家に対して売買サービスを提供します。
今回のETFでも業者がETFを東京証券取引所が仕入れて、手数料を上乗せした形で投資家に売買サービスを提供することになります。
ETFの流動性が高まるメリットがあり
ETFの売買にマーケットメイク制度を導入することによるメリットとして、ETFの売買の流動性が高まることにあります。
東京証券取引所には数多くのETFが上場していますが、知名度があるETFであれば流動性はそれなりにありますが、知名度が少ないETFは流動性が乏しい銘柄もあります。流動性が乏しいことで、購入したい値段で買えない、もしくは、売りたい値段で売れないという問題がおきます。
株でもETFでも同様ですが、株を買う場合は、あらかじめ買いたい値段で誰かが売却する必要がありますが、流動性が低い場合、買い注文を出しても、その値段で誰も売却しなければ取引はいつまでも成立しません。そのため、予想以上に高い値段で買わなければならないことになる、もしくは、安い値段で売却せざる得なくなるなります。
ETFは、指数に連動するため、一般的な投資信託とは異なり低コストでの運用が可能な投資商品ですが、流動性が低くなることで低コストのメリットがなくなってしまうことになります。そのため、東京証券取引所では、マーケットメイク制度を導入することでマーケットメーカーにETFの売買を増やしてもらうことで流動性を高め、コストメリットを高める狙いがあります。
本来の株価に手数料が上乗せされる
マーケットメイク制度は、売買手数料という形で売買時の手数料を徴収するわけではなく、ETFの本来株価に上乗せします。そのため売買時の価格には「スプレッド」と呼ばれる価格差が発生します。そのため、マーケットメーカーが設定するスプレッドによっては投資家に対して不利となる可能性もあります。
FXでも同様ですが、できるだけ、収益を上げていきたいと考えた場合は、各マーケットメーカーが設定したスプレッドをよく比較した上で、取引するマーケットメーカーを決めること重要となります。
マーケットメーカー第1号は野村證券
東証がマーケットメイク制度を今年の7月に開始するのに伴い、マーケットメーカーを募集しています。既に、4月より野村證券がマーケットメーカーの第1号として申請しています。
今後も、ネット証券などを中心にマーケットメーカーに参入申請する証券会社は増えていきそうです。