企業が、個人投資家から資金調達を行う手段として株式を発行することと社債を発行する2つの方法があります。この2つはいずれも資金調達を行う手段であることは共通していますが、特徴と仕組みについては全く異なるものです。今回は、株式と社債の違いについて解説します。
株式は企業を購入すること
株式は、2017年12月31日の記事で詳しく記載していますが、株式を発行を行うことで資金を調達し、そのお金を使って事業拡大を行います。
株式は、投資家から資金を調達するのと引き換えて、出資した投資家に対して保有している株式数相当の経営権を付与します。そのため、投資家としては、株式を購入するということは対象の企業を購入することになります。また、企業としても投資家から預かった資金は、自己資本になりますので返済する義務はありません。
投資家としては、企業の経営権が与えられることで、株主総会などを通じて実際に経営に関して意見を表明できる他、保有している株式数に応じて配当金を得ることができます。また、企業の業績がよくなれば、それと比例して株価が上昇することで、値上がり益を得ることができます。企業としても、株主の期待に添えるよう経営者と従業員が一丸となって事業活動に取り組むことが重要になるほか、経営者は定期的に事業活動の報告を投資家に対して行う義務があります。
一方で、企業の業績が低迷した場合は、配当が無配となる可能性があることに加え、株価が下落することも考えられます。そのため、出資したお金である元本がマイナスになる可能性も考えられます。株式を保有することは企業の経営権が与えられると同時に、企業の業績に左右されてしまう特徴があります。
社債は企業にお金を貸すこと
債券の仕組み(筆者作成)
社債は、企業がお金を借りるために発行した借用証書である債券です。そのため、社債を購入することは、対象の企業に対してお金を貸すことになります。
債券は、企業側としては、社債を発行することでお金を借りることになりますので、企業は決められた返済期日である償還日までに利息の支払いと借りたお金を返す必要があります。そのため、企業としては社債を通じて調達した資金は「負債」に該当します。一方で、投資家側としては、発行先である企業が支払う「利息」が収益になりますので「社債」は資本に該当します。
株式は、企業を購入することとなるため、業績などによって株価が変動する、配当金額が変わるなど影響を大きく受けやすいですが、社債の場合は、あらかじめ購入(貸付)できる金額が決められていることと、支払われる利息が決められていますので、株式と比べると業績による影響は少なく、元本割れのリスクも少ないといえます。
ただ、社債でも全く元本割れのリスクが無い訳ではなく、企業の業績が悪化し破綻とった場合、利息の支払い遅延や最悪の場合、貸したお金が返ってこない「債務不履行」になる恐れもあります。そのため、社債を購入する場合は、第三者の格付け機関が付与した格付けをチェックすることが重要です。
株式と社債は売買できるタイミングが異なる
株式と社債の違いとして、購入できるタイミングも大きく異なります。
株式の場合は、証券取引所が稼働している時間帯であれば、いつでも自由に売買することができます。一方で、社債の場合は、企業が資金調達の必要性が生じた場合のみ債券を発行することになりますので、証券会社を通じて、いつでも好きな時に購入できるものではありません。
社債を購入したい場合は、日本経済新聞や証券会社のホームページで新たに発行された社債情報をこまめにチェックします。購入したい社債を見つけた場合、あらかじめ社債の購入者を募る「公募期間」があります。この公募期間内に証券会社を通じて申し込む必要があります。
社債は、返済までの償還日が決まっていますが、何かしらの事情で中途換金(売却)を行いたい場合は、市場価格で売却することになりますが、基本的には取引のある証券会社が買い取ることになります。買取価格は、金利や格付けや債券の流動性などによっても異なり、手数料などを考慮すると高値で売却するのは難しいと言えます。そのため、社債は中途換金で売却益を狙うものではなく、償還日までに保有することで、利息収入で利回りを得る投資であると言えます。
株式と社債の利回り
株式と社債の利回りの違いについて見ていきます。
株式の場合は銘柄によって配当金を支払う銘柄があります。配当金の利回りを配当金額から株価で割った配当利回りを、2018年2月9日時点における東京証券取引所第一部に上場している全銘柄を対象に日本経済新聞で調べてみたところ、平均配当利回りは1.50%となっています。個別の銘柄や株式相場の状況によっても利回りは変わってきますが、配当利回りは2%前後で推移すると考えておいても良いでしょう。
社債の場合は利息が利回りとなりますが、格付けによって利回りも異なります。一般的に、格付けが高く信用度が高い社債であれば利回りは低く、逆に、格付けが低く信用度が低い社債であれば利回りは高くなる傾向にあります。
資産運用情報サイト「Pmas」に記載された2018年時点におけるAAが付与された年間平均社債利回りを見てみると、残存期間が10年間の社債で0.416%となっています。
株式と債券を比べると、リスクが比較的高い株式の利回りが高いと言えそうです。